「なんとなく企画クリエイティブの仕事をしたいと思っている人のなんとなくをなんとなくじゃなくする本 なんクリ」には、企画力を向上させるための手段が書かれています。
企画は何をする仕事?
まずは企画という仕事の定義からです。
企画とは世間にあまたに存在する課題に対してユニークな答えの出し方をする仕事と本書では定義しています。
企画の重要性
現在は情報があふれる時代で、企業も個人もよりわかりやすい情報を発信しないと届かない時代になっています。
また、高度成長の時代を終えて小さなパイを奪い合う時代に入ると、生き残りをかけた、より狙いのはっきりした戦略や勝ち残れる企画が求められるようになりました。
高度成長期の成熟途中の市場であれば、技術の差が品質の差になって現れ、そこが価値となっていましたが、現在の成熟した市場の中では、技術や品質は頭打ちとなり、どの企業の製品も小さな差しかなくなっています。
だからこそ企画が重要な意味を持ち、自社の製品やサービスを明確にユーザーに伝える企画力が問われる時代になったのです。
企画におけるアイデアとは?
誰も見たことのないすごいアイデアの企画が良いように思われますが、これは実は間違いです。
人は全く見たことのないものに感動出来ないのです。人は初めて見るものに対してどう判断すればいいのかそからず、そこで生まれるのは、「ビックリ!」と「なんじゃこりゃ?」なのです。
本書で引用されている「アイデアのつくり方」著者: ジェームズ・W・ヤングという世界的ベストセラーがあるのですが、その中で著者のジェームズ・W・ヤングさんは、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」と言っています。
企画をする上で重要なのは、高い確率で、ターゲットの気持ちを大きく動かすスゴい組み合わせを考えることです。
新しいアイデアを出して企画に繋げる方法
では、この記事の本題である新しいアイデアを出して企画に繋げる方法を紹介していきます。
1. 脳みその「クセ」チェックシート
企画をする上で、アイデアを出す脳はメインエンジンです。
企画を仕事にしたいのであれば、自分の脳と向き合い、脳を鍛えるという感覚を持たなければなりません。
そこで、まず初めにやらなければならないのが、自分の思考のクセを知ることです。
誰の脳でも必ずクセがあり、それを知って、クセから脱却しなければ斬新な発想は出来ません。
まずは以下の質問に答えて自分の脳みそのクセを自覚することが重要です。
- 自分の脳みそには、どんなクセがあると思いますか?
- そのクセは、強い方だと思いますか?
- そのクセとどのように付き合おうと心がけていますか?
- 第三者から、あなたの企画のあり方についてアドバイスや説教を受けたことはありますか?
- それはどんな内容でしたか?
- それを解決するために心がけていることはありますか?
- アイデアを考えるときに実践しているあなたなりの方法は?
- なぜ、その方法がいいと思ったのか、教えて下さい
- よき企画を生み出す人になるためには何が必要だと思いますか?
2. なぜのDiary
書き方は自由で、その日に発生した「なぜ?」を文頭においたら、原因、理由、考察を書きかます。
「なぜ?」を考えることを習慣することが必要で、企画のヒントが得られるようになります。
3. クリエイティブ系の年鑑を見る
企画をやっていて、いい企画がどんなものか分からなくなる時期になってしまったら、良い企画をまとめた年鑑的なものを見てみると、意味のある面白さとは何なのか、自分にはどんな思考が足りていないのかを知るヒントが得られます。
ブログ執筆者の意見
ここでは例として年鑑が挙げられていますが、年鑑って調べてみるとなかな高いんですよね。広告コピーを集めたコピー年鑑を調べてみると22,000円…職場に置いてある場合や、図書館に置いてあれば読みたいですが、値段が高い!!!
コピー年鑑2020
要は、意味のある面白さ、自分に足りない思考を知るためのものなので、良い企画をまとめたものであれば何でも良いはず。
個人的に調べてみたのですが、以下のような本を読んで自分のアイデアの幅を広げるのが良いかと思いました。
雑誌の「宣伝会議」を購読するのも良いですね。
4. 放射A4法
まずは中心に丸を描き、そこにテーマワードを置きます。そのまわりにテーマワードから思いついたことを書いていきます。
さらにいいキーワードはそこを起点として連想を広げていきます。
A4の紙いっぱいになるまで書くという目標を決め、漠然と考えていては思いつかない何かを思いつくことを目指します。
[例] 映画をテーマにして実際にやってみた
ブログを執筆してる最中に例としてやってみようということでやってみました。
最初は頭の中に「映画」というワードしかありませんでしたが、結構思考が広がりました。
5. 名作の分解
どんな業種にも記憶に残る仕事が存在します。
そんな名作と呼ばれる仕事を「漠然といい」ではなく「訳あっていい」と理由が明確化出来るかどうかで、その後の自分の仕事に生かせるかどうかが決まります。
以下の項目を使って、名作の分解シートを作成し、名作と呼ばれる仕事の良さを明確にしましょう。
名作の分解シート
課題
- この仕事の元の課題は何だったのか?何だったと想像されるのか?
課題解決の考え方
- 課題解決はどんなアプローチで設計されたのか?
コンセプト
- どんなコンセプトが生み出されたのか?
マーケティング戦略のユニークネス
- マーケティング戦略的に着目すべきポイントはあるか?
- あるとすると、それは何か?
表現戦略のユニークネス
- 表現戦略的に着目すべきポイントはあるか?
- あるとすると、それは何か?
表現戦術のユニークネス
- 表現の具体戦術に着目すべきポイントはあるか?
- あるとすると、それは何か?
6. 視点アスロン
視点アスロンは、「面白さ」の意味を幅を持って考えるクセをつけさせるためのプランニングメソッドです。
1つの事に対し、制限時間を決めて視点を出します。
例えばadidasのネット活動であれば、
- adidasのユニークなネット活動を、社会貢献視点で考える
- adidasのユニークなネット活動を、FIFAワールドカップ連動視点で考える
- adidasのユニークなネット活動を、グローバル連携視点で考える
- adidasのユニークなネット活動を、リクルート企画視点で考える
などなど、視点は探せばいくらでも出てきます。
制限時間になったら出した視点から良さそうなものだけを厳選して、次の企画の材料にします。
7. プレスリリース発想法
「世界初!」、「世界に1つだけの」、「自分史上最高の」という書き出しで文章を書き、わかりやすくスゴいことを考えつく事を目標にします。
ビール会社のためにユニーク企画を考えるとしたら、
- 世界初!製造から1時間以内に飲めるビアガーデン!
- 世界初!注ぎ上手ロボット完成!
- 世界初!氷でできたグラスの宅配サービス!
- 世界初!海底ビアガーデン、オープン!
などです。
細かいことは置いといて、発想の風呂敷を広げて考えを出すようにします。
8. 〇〇って何だっけカルテ
リデザインする課題がある場合に、課題のデザインを分解してリデザインの可能性を考えるメソッドです。
長年愛されている商品やサービスには、元の価値に時代的ニーズに応えるための価値が付与されて進化を遂げています。
リデザインは、そうした時代と向き合ってきた商品の今の時代的ニーズとの新たな向き合い方を考える作業です。
〇〇って何だっけカルテは以下の4つのステップに分かれています。
STEP1 その生まれに遡る
STEP2 そのデザイン構成要素を分解する
STEP3 その進化のプロセスとその進化の引き金になった時代のニーズを分解する
STEP4 その進化の流れに即してリデザインの可能性を考える
STEP1 その生まれに遡る
切手を例に何だっけカルテを作ってみましょう。
郵便料金の支払いを証明するという切手は、1871年の竜文切手が最初と言われています。
そのデザインを構成している基本要素は、郵便物に貼って邪魔じゃないサイズであること、貼れる素材で出来ていること、複製を防ぐ複雑な模様の印刷がされていること。
私たちが使用している切手の原型は最初の切手から出来上がっていたようです。
STEP2 そのデザイン構成要素を分解する
現在使用している切手は、最初の切手の流れをくみながら、どのような要素でデザインが成立しているのでしょうか。
- 定形郵便物に貼れる、一定のサイズ以内であること
- 発行国の国名が入っていること
- 額面金額表示が視認出来るサイズで入っていること
- 複製が容易ではないグラフィックが使用されていること
- 裏にのりづけ機能がついていること
- 周りにミシン目がついていて、一枚一枚切り離しやすいこと
まとめるとこのような感じになっています。
STEP3 その進化のプロセスとその進化の引き金になった時代のニーズを分解する
例えば「ふるさと切手」というものがあります。
ふるさと切手は、ふるさと振興の意図で地域の風物や行事をテーマにして発行される切手で、「ふるさと振興」というニーズから進化した切手です。
他にも「グリーティング切手」という切手は、春夏秋冬の季節ごとに発行されるシールタイプの切手で、それぞれの時期に合わせたデザインの切手です。
ハッピーグリーティング切手というお祝い用のグリーティング切手もあり、様々な挨拶用に進化したデザインの切手です。
https://www.post.japanpost.jp/kitte/collection/archive/2021/0922_01/
この様に切手の進化や時代的ニーズを分解、考察し、まとめます。
STEP4 その進化の流れに即してリデザインの可能性を考える
今時技術による切手進化 → AR切手。特定のアプリを通して見るとキャラクターが飛び出したり、メッセージが聞けたりする。
時代的ナショナルブランディングのあり方 → 食や、アニメなど、次の時代の日本のブランディングを担う産業イメージ活用した切手を作る。
など、新たな時代に合わせた切手のリデザインを考えます。
まとめ
企画という仕事自体よくわかっていない人に向けて、アイデアの出し方や業界の事情などの情報がよくまとまっていました。
企画に興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか?